中国に住むと嫌でも簡体字に慣れなければならないのです。まあ、簡体字と言っても大概の文字は行書や草書などの手書きの省略形などから想像できたりするのですが、たまに「これは???」と言う文字に出会ったりします。
簡体字というのは共産党が新中国を建国した後に表音文字運動の一環で、漢字を簡略化して漢民族以外の人間にも扱いやすくし、いずれはアルファベットのピンインに表記を統一しようと言う目標までの過度期の文字として誕生したそうです。ベトナムは成功しましたが、漢字文化の源たる中国そのものが表意文字文化からおいそれとは表音文字に移行は出来なかった訳で、過度期のまま中途半端に定着してしまった感もあります。今回は今までに思い出に残っている簡体字の数々を紹介します。何だか全然明星の話題に戻らないなぁ。

バッテンにちょん。これは初めて中国を旅行した1986年に見て、ああここは外国なんだ〜と言うインパクトを私に一番強く植え付けた字です。この文字の前には「社」「会」「主」と来ます。つまりは「社会主義」の「義」の字なんですね。当時は街中の塀とかに「〜するのは社会主義の美徳である」などと言うような共産党のスローガンがやたら書かれていて、その中に頻繁に出てくるのです。正直言って「社会主義」の威厳が失われるような印象もありましたが、この方が書きやすくて合理的なのかも知れません。さすが社会主義。

これは結構分かりやすい方かな。1文字目は「飛」の字です。この方が身軽で、いかにもかっ飛んで行きそうなイメージがします。2文字目は「つくえ」ではなくて「機械」の「機」。じゃあ「つくえ」はどう書くのかというと「卓球」の「卓」....の、ようなもの、です。「卓」と違うのは、下の十文字が「木」になっている点です。普通は「椅子」などと同じように「子」を付けて書きます。「飛機」と2文字並べると「飛行機」の意味になります。

「人」が3つ。これは最初よく分かりませんでしたが、調べてなるほど、「大衆」の「衆」の字なのでした。人が3人集まれば「大衆」なり、これ検挙に値するなり。....と言う事はありません。中国で走っている自動車には「大衆汽車」と言うブランドがあり、マークはこの「衆」の簡体字を円で囲んでいて、なんかどっかのメーカーに似ているなぁと思っていたんですが、何の事はない、「大衆汽車」とはフォルクスワーゲンの事なのでした。因みにドイツ語の「フォルクスワーゲン」の意味はそのものズバリの「大衆車」。座布団3枚。

「ニム」ではなくて「雲」です。あめかんむりが省略されて下だけになってしまいました。日本でもカタカナの「イ」は漢字の「伊」から「尹」を省略して出来たと言う話ですので、こう言うのもアリなんでしょう。当然ながら「雲南省」の「雲」もこの字で書かれます。

1文字目は上の「雲」から類推するとわかると思いますが、「電気」の「電」の字です。同じように「雷」の簡体字は「田」なのかと言うとそうではありません。なんでだろう(^-^;)。2文字目は「雲」に「力」かなとなりそうですが、これも違ってこれは「動」の字です。ここでの「ニム」は「重」を簡略化したものらしい。法則がよく分かりませんな。ところで「電」の字の「田」の下に垂れ下がっているのは、かのベンジャミン・フランクリンが雷の中に上げた凧の糸を表している....訳では無いですよね....。

この文字は元の字がまったく類推できませんでした。実は「保護」の「護」の字です。何でてへん?何で「戸」?戸に手を掛けている図なので「保護」どころか空き巣を連想してしまうのは私だけでしょうか?パスポートの中国語「護照」も、当然この字で書かれています。

分かるようでして、なんだか違和感が....。これは「親愛」なのですが、「親」の右の「見」がありません。「愛」の字も「心」と「夂」の替わりに「友」が入っています。これじゃあ愛情じゃなくて友情ではないかしら?「見」は中国語で「会う」という意味があります。簡体字にまつわってよく言われる話で「愛には心が無く、親には会う事も出来ない」と言うやつです。

これも省略形。「競争」の「競」の字です。小学校でこの字は「人が2人で競い合っている所を表している」と教えられた気がするんですが、1人では競争になりまへんがな(^-^;)。

さて食堂で見かけてピンと来なかったこの文字、聞いてみたらなんと「蝦」でした(--;)。思わず「虫に下かよっ!」と言ってしまいましたが、「蝦」はうまそうな気がしますが、この文字はいくら眺めてもおいしそうだなと言うイメージが湧いてきません。

一見、普通の「面」です。何が変なのかと思われる方も多いかも知れません。この文字、「前面」とかの意味で普通に使われる事も多いのですが、個人的に許せないのは、「拉麺」の「麺」の字までこの文字を使っている事です!!何も「麦」をすっ飛ばして省略する事もなかろうに!ラーメンの本場の国というプライドはないのかっ(なさそうだけど)!「蝦」に負けず劣らずうまそうに見えません。

うかんむり、つまり屋根の下に「人」が住んでいます。これは「家」。「家」の字を見ると分かりますが、うかんむりの下に「豚」などの文字にも使われる「家畜」を意味する字が入っているのです。人間が主体の社会主義としては家畜を住まわせるのはけしからんと言う事で、この字になっています。......すみません、これは冗談ですので本気にしないで下さい。字は私がちょこっと細工して作りました(^-^;)。ただこれは根も葉もない話ではなくて、簡体字化をさらに推進しようとする時に提案されたのですが、あんまりじゃないかという事で不採用になったという話をどこかで聞いた事があります。

「rang4」と読みます。中国語を勉強する時、基本構文に必ず入っている文字で、意味としては「rang4 A B」で「AにBをさせる」となります。「rang4我看看」で「私に見せなさい」と言った感じです。この構文で勉強し始めたので永らく日本ではどう言う字にあたるのか考えなかったのですが、ある日辞書を見て教えられました。これは「譲渡」の「譲」、つまり「ゆずる」と言う意味だったのです。なるほどなぁ。
この文字では、かなり印象深い経験があります。いつぞや南京に出張した時、ふと横断歩道を渡ったのです。そこには信号が無かったのですが、替わりにこの字が描かれていたのです。再現してみると、こんな感じです。

....これは思わず感心してしまいました。日本だと「止まれ」と縦に書く所を「(歩行者に道を)ゆずれ」の、たった1文字で表しているのです。いやまったく単純明快。こう言う場合、簡体字は視認性に優れていますのでかなり分かりやすいです。もちろん慣れればですが。比較のために、ちょっと繁体字でも再現してみましょう。

....う〜、何の字か考えている間に人をはねてしまいそうだ(^^;)。これは簡体字に脱帽です。(※再現画像は左側通行ですが、実際には中国は右側通行です。アップしてから気づきました....。)
関係ないですが、最近「鉄拳」さんはどこで何をしているんでしょうか?
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