コピー製品について
先日ちょっと携帯電話のコピー製品の話をしましたが、今度は他のコピーものです。
製造業には設計が必須ですが、中国では2次元の寸法図をすっ飛ばして3次元ソフトで直接作ってしまうのがポピュラーです。大体のデザイン図面は2次元ですが、それも寸法は入れずに、CADデータそのままで3次元に持ち上げます。で、部品設計も会議室にパソコン持ち込んでプロジェクターでスクリーンに投影しながら会議しつつの設計検討で1日ではい一丁上がり!と言うスピーディーさで、日本みたいに問題点がないかじっくり検討すると言う事が余りありません。その分修正も多くはいるのですが、何とか出来上がってしまうのが不思議です。
3次元ソフトでポピュラーなのが「Pro/ENGINEER」と言うソフト。これは端で見ていてもわかりますが、デザインから金型設計まで一貫して使えそうな上に稜線処理などの事後修正もすっごく簡単そうで、若い中国人設計者がこともなげに操作しているのを見ると、Pro/ENGINEERのマニュアル本も見たことがない私には羨ましい限りです。
これが中国でのPro/ENGINEERのHOW TO本です。厚さ2cmほどで470ページ。1冊48元ですから、日本円で650円くらいです。

この手のHOW TO本は結構小さい本屋でも置いていて、みんなこれ買ってちょちょいと覚えちゃうんでしょうねぇ....しかし待て。Pro/ENGINEERって日本円で120万円以上するのだぞ!?
日本でもPro/ENGINEERのHOW TO本はあるにはあるのですが、まず本屋で見かけることはありません。だいたい、Pro/ENGINEERを買えばマニュアルが付いてくるのですし、これだけ高いソフトであればメーカーの出張サポートだって受けられます。
断言はしませんが、巷の工場の多くはコピー版のPro/ENGINEERを入れて使用しているのでしょう。実際、電気屋街に行くと日本ではとても手が出ない高価なソフトが200円くらいで売られています(^^;)。
日本の某クライアントさん(一部上場)に聞いてみたところ、日本ではソフトの不正使用に対する監視が厳しく、パソコン1台毎に正規板を入れるために膨大な予算を組んでいると言うことです。
中国の製造コストが安いのって、人件費もさることながら、こう言う面もかなり大きいんじゃないかと思います。120万円あったら若手の設計者の月収の30倍くらいになってしまいますから、この製造コストで正直にパソコン1台毎に120万円のソフトを入れているとはとても考えられません。これじゃあ日本は叶うわけがないのです。
.....さてこう言う状況を見て、台湾の連戰候補のように「不公平だっ!」とか「これだから中国はずるいよな」とか言うのは簡単ですが、それだけでは済まない面があります。と言うのも、そう言う工場の多くが、日本から製造委託を受けていたりするからです。生産管理などで駐在に来ている日本人だったら、恐らくそう言う現場を見ていることでしょう。しかしソフトをどうやって入手しているかにまでは言及することはありません。至上命題はコストダウンなのですから。
こうなると中国の製造業の根幹の問題になります。つまりは先進国が委託している中国の製造業とは、先進国が不正設計ソフトの使用を看過する事によってコストダウンが成立していることにもなるからです。
もちろん、全てがそうだとは言いません。ただ、Pro/ENGINEERのHOW TO本が巷にあふれているのは紛れもない事実なのです。
こんな状態が長続きするかどうかはわかりません。さすがにWTOに加盟したのですから、いずれは規制をかけなければ行けなくなる可能性はあります。今でだって公安がその気になれば、不正ソフト使用の咎で捕まえる事が可能です。
いずれ規制がかかったとき....隙を見せた日系の工場がスケープゴートにされて反日の論調でメディアで取り上げられたり....あぁ〜また暗い想像を(^^;)。

この携帯電話のデザインは韓国DADAM社。韓国のデザイン会社に発注する中国の携帯電話メーカー、多いです。
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